外縁の響

音楽のガイエン、そしてゲエンとしての響

改造エスラジ1 -穴

バイオリンにはf字孔、ギターにはサウンド ホールという穴が空いています。二胡は裏が透かし彫りになっていてやはり外気とつながっています。

しかし日本の胡弓やエスラジには基本的に穴は無く、外気とつながってはいません。

「音が大きくなる」「音の抜けが良くなる」というウワサを聞いたことがあるので、音量を大きくするために穴を開けてみました。

f:id:esrajs:20191114010459p:plain

改造エスラジ 穴

胴に左右2つ。目みたいですね。それとエスラジは棹(ネック)も空洞で胴とつながっているので、小さめのを4つ主音(Sa)と属音(Pa)の位置に空けました。全部で6つ。

 

結果ですが、音量は多少大きくなった程度ですが、倍音のバランスは確実に変わります。革が裏から受ける圧力が無くなったことも影響があると思います。

低音成分が大きくなるのですが、その影響は1弦では小さくてあまり変わりません。2、3弦では確実に、4弦でははっきりとその差がわかります。(我々の流派では2、3弦は同じ物です。)

全体の音色変化としては、よりまろやかな音色になったと感じます。

効果が疑問だった棹の穴からも音が出ています。ただペグ側(上)の2つは効果が薄いです。

悪い点として外気の影響を受けやすくなる、つまり湿気を含んだ革の沈み込みがより大きくなることが予想できますが、今のところ実感したという事はありません。

改造エスラジ2 -共鳴弦1

エスラジはインド楽器なので、当然インド音楽を演奏しやすいようにできています。

また、同じような目的のために作られている他の同類の楽器、例えばディルルバやサーランギと比べて、大きく機能が違うと言うこともありません。

しかし、本来の用途でない音楽で使う時は不便さを感じることがあります。

1つにはエスラジは準備された音高のみ共鳴します。基本的には1つの7音音階で共鳴弦(ターラーフ)をチューニングするので。するとこの音高に合っている音は共鳴しますが、そうでない音は共鳴しないどころか発音しづらくなります。何しろ振動しない弦でブリッジを押さえつけているわけですから。

インド音楽では基本的に転調はありません。しかも何十分から1時間以上でも一つのラーガ(だいぶ違いますが音階のようなもの)を演奏するので違うチューニングにする必要がありません。ですが、例えば欧米の音楽を演奏する場合、一曲5分を10曲、キーは色々、しかも曲間も短くてチューニングを変えるのが大変、なんてことが普通です。

それでこの問題の解決策は、

1、12半音を全て共鳴弦に準備する。2、共鳴弦を取り外す。

のどちらかになります。

これらはもちろんデメリットもあります。

1、は12半音全てで共鳴しますが、ブリッジを押さえつける弦が増える分だけ音量が下がります。また、特に音の出だしでは主奏弦(共鳴弦でない弓でひく弦)が発音しづらく、音が裏返る、つまり弦本来の振動でなく摩擦音のキーっという音が出てしまうことも起こりやすくなります。

2、共鳴弦にある音ない音の違いはありません。しかも音量、発音についても改善されます。けれども当然エスラジ特有の共鳴音 残響音は出ません。つまり「エスラジの音」とは別物の、胡弓に近い音になります。

ここで1つ違った点を考えなくてはなりません。「この楽器に共鳴音は本当に必要なのか」という問題です。

楽器単体で自然の共鳴 残響音がつく事は、この楽器の大きな魅力です。しかし、例えばポップスバンドの中などで演奏した場合、エスラジの音は不明瞭になります。バンドの中の1つの楽器だけにリバーブをかければその音は遠くに行ってしまいます。また、生楽器なのでツマミでリバーブを調節することもできません。

以上のことから2、の方法、つまり共鳴弦を取り去って、電気的にリバーブをかける、ということも、このような状況下、つまりバンドで欧米音楽を演奏するような場合には、エスラジにとってこの方法は有用かと思います。

 

f:id:esrajs:20191108205302j:plain

改造エスラジ

左の物が共鳴弦を取り去ったエスラジ。主奏弦も重複する1本(ジュリ)も取って3弦。

右の物が共鳴弦を5本加えて、12半音が鳴るようにしたエスラジ。これについては後述します。