外縁の響

音楽のガイエン、そしてゲエンとしての響

島田式における即興の技術-二重の調エ、琉調と都節音階

ここでは、上行陰音階である琉球音階と下行陰音階である都節音階が同時に鳴る状態を考えてみます。

総和音を比較してみると主和音のみが共通で他に共有できる和音はありません。琉の主和音上で都節音階を演奏することは当然ながら問題ありません。

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琉の長7度音と都の上行形の短7度は矛盾しますから、都は基本形だけを使います。また、琉下行形の核3和音が鳴っている時は都の2度音と矛盾しますので都節音階は使えません。

琉の導和音の上に都の2つの中間音を4度で付加することができます。(下の譜例1小節目)

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コードシンボル○73は中音から減7度と減3度(10度)音が付加されているという意味*1で、この2つが都の中間音です。この和音では下音fを省略することも可能です。2小節目以降はこの和音のバリエーションです。

琉導和音の中音と付加下7度音、導和音の上音と付加下3度音は7度を作ります。この音程を作る2音は下の譜例のように互いに反行(2→1、3→4 6→5、7→1)させるのが基本です。片方または両方を保留することもあります。

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核音と基本形の琉、都各音階の中間音を足すとダブルハーモニックスケールまたはインドのラーガ バイラブの音列と一致します。しかし島田式では2つの音階は明確に区別されます。

f:id:esrajs:20200516123636p:plain琉球音階と都節音階は交互に奏することもできますが、互いの中間音を続けて鳴らすことはできません。赤音符は琉の、青音符は都の中間音です。

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これらの旋律は琉球音階とも都節音階とも言えません。

次の譜例では上段に琉調の和音を4度進行で、下段に都調の和音を5度進行で書きました。両者は機能が一致しています。また各小節は上下段通して4度で構成されています。演奏においても下段の都和音が実際に鳴っているかいないかにかかわらず、都旋律は琉に対応する都の機能を想定して演奏します。つまり琉の主和音では都の主和音でのように(例えば核2音は5度音と想定)、琉の導和音では都の導和音でのように演奏します。

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 次の曲例では1カッコは琉球音階のまま、2カッコは基本形の都節音階で旋律が作られています。また後半ではフレーズ2を使いました。

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*1:○はディミニッシュ=減の意味です

島田式における即興の技術-二重の調ウ、琉調と律音階

ここでは、上行陰音階である琉球音階と下行陽音階である律音階が同時に鳴る状態を考えてみます。

総和音を比較してみると主和音同士、琉の異向形の核3和音と律の核2和音は共通しています。琉のこの2つの和音上で律音階を演奏することは問題ありません。

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律の核3和音では短7度音を使いますので琉の長7度音と矛盾します。ですから律音階上行形は使えません。律音階基本形と矛盾する音度はありません。

琉の導和音の上に律の2つの中間音を4度で付加することができます。(下の譜例1小節目)

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コードシンボル73は中音から短7度と短3度(10度)が付加されているという意味で、この2つが律の中間音です。この和音では下音fを省略することも可能です。2小節目以降はこの和音のバリエーションです。

琉導和音の中音と付加下7度音、導和音の上音と付加下3度音は7度を作ります。この音程を作る2音は下の譜例のように互いに反行(2→1、3→4 6→5、7→1)させるのが基本です。片方または両方を保留することもあります。

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核音と基本形の琉、律各音階の中間音を足すとハ長調Cイオニアの音列と一致します。しかし島田式では2つの音階は明確に区別されます。

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琉球音階と律音階は交互に奏することもできますが、互いの中間音を続けて鳴らすことはできません。赤音符は琉の、青音符は律の中間音です。

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これらの旋律は琉球音階とも律音階とも言えません。

次の譜例では上段に琉調の和音を4度進行で、下段に律調の和音を5度進行で書きました。両者は機能が一致しています。演奏においても下段の律和音が実際に鳴っているかいないかにかかわらず、律旋律は琉に対応する律の機能を想定して演奏します。つまり琉の主和音では律の主和音でのように(例えば核2音は5度音と想定)、琉の導和音では律の導和音でのように演奏します。

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次の曲例では1カッコは琉球音階のまま、2カッコは基本形の律音階で旋律が作られています。また後半ではフレーズ2を使いました。

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島田式における即興の技術-二重の調イ、民調と都節音階

ここでは、上行陽音階である民謡音階と下行陰音階である都節音階が同時に鳴る状態を考えてみます。

総和音を比較してみると主和音同士、民の核2和音と都の異向形の核3和音は共通しています。民のこの2つの和音上で都節音階を演奏することは問題ありません。

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民の核3和音では長2度音を使いますので都の短2度音と矛盾*1します。ですからこの和音が鳴っている時は都節音階は使えません。

民の導和音では都節音階と矛盾する音度はありません。都の2つの中間音はこの和音の上に4度で付加することができます。(下の譜例1小節目)

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コードシンボル73は中音から短7度と短3度(10度)が付加されているという意味で、この2つが都の中間音です。この和音では下音fを省略することも可能です。2小節目以降はこの和音のバリエーションです。

民導和音の中音と付加下7度音、導和音の上音と付加下3度音は7度を作ります。この音程を作る2音は下の譜例のように互いに反行(2→1、3→4 6→5、7→1)させるのが基本です。片方または両方を保留することもあります。

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核音に基本形の民、都各音階中間音を足すとCフリギアと一致します。しかし島田式では2つの音階は明確に区別されます。

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民謡音階と都節音階は交互に奏することもできますが、互いの中間音を続けて鳴らすことはできません。赤音符は民の、青音符は都の中間音です。

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これらの旋律は民謡音階とも都節音階とも言えません。

音列としての都節音階を民調と共に鳴らすことができることは説明できました。しかし、民謡音階と同主都節音階とは核音が違いますから、民の中間音を都のそれに入れ替えただけでは都節調とは言えません。

次の譜例では上段に民調の和音を4度進行で、下段に都節調の和音を5度進行で書きました。両者は機能が一致しています。演奏においても下段の都節和音が実際に鳴っているかいないかにかかわらず、都旋律は民に対応する都の機能を想定して演奏します。つまり民の主和音では都の主和音でのように(例えば核2音は5度音と想定)、民の導和音では都の導和音でのように演奏します。

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次の曲例では1カッコは民謡音階のまま、2カッコは上行形を含んだ都節音階、3カッコは基本形の都節音階で旋律が作られています。また後半ではフレーズ2を使いました。

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*1:ここでは増1度を作ることをこの様に言います

島田式における即興の技術-二重の調ア、民調と律音階

島田式での核音集合=トニックは、日本伝統音階の4種で共通です。つまりトニックが鳴っている時点では琉球、民謡、律、都節の音階が演奏可能です。

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ここでは、上行陽音階である民謡音階と下行陽音階である律音階が同時に鳴る状態を考えてみます。

主和音以外でも、異向形導音で見てきたように以下の和音は律と共有できます。この3つの和音上で律を演奏することは問題ありません。

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それで、民の和音群の中で律を演奏する上で問題となるのは導和音だけです。

2小節目はやはり既習の異向形導音を付加した導和音ですが、この付加された異向形導音は律の中間音(導音)とも言えます。それで、もう一つの律の中間音である長6度音aも加えることができます。

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3小節目のコードシンボルM73は中音から長7度と長3度(10度)が付加されているという意味で、この2つが律の中間音です。この和音では下音fを省略することも可能です。次の譜例にこの和音のバリエーションを示します。

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これらの付加音としての律中間音は伴奏和音として実際に奏することもできますが、それを想定して旋律のみがこれら付加音を、つまり律音階を奏することができます。すると、伴奏は民調、旋律は同主律音階という二重の構造ができあがります。

この上に付加された律中間音は民導和音の構成音と長7度を作ります。これを転回した短2度、短9度は響きが悪いので旋律としては長く鳴らさない様にします(1、3小節目)。また、この音程を作る2音は下の譜例の2、4小節目のように互いに反行(2→1、3→4 6→5、7→1)させます。片方または両方を保留することもあります。

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核音と基本形の民、律各中間音を足すと3+2+2で7音となります。7音音階として捉えるとCドリアの音列と一致します。

f:id:esrajs:20200513091900p:plainしかし島田式では2つの音階は明確に区別されます。

民謡音階と律音階は交互に奏することもできますが、互いの中間音を続けて鳴らすことはできません。赤音符は民の、青音符は律の中間音です。

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これらの旋律は民謡音階とも律音階とも言えません。

音列としての律音階を民調と共に鳴らすことができることは説明できました。しかし、民謡音階と同主律音階とは核音が違いますから、民の中間音を律のそれに入れ替えただけでは律調とは言えません。

次の譜例では上段に民調の和音を4度進行で、下段に律調の和音を5度進行で書きました。両者は上下対称で機能も一致しています。演奏においても下段の律和音が実際に鳴っているかいないかにかかわらず、律旋律は民に対応する律の機能を想定して演奏します。つまり民の主和音では律の主和音でのように、(例えば核2音は5度音と想定)民の導和音では律の導和音でのように演奏します。

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次の曲例では1カッコは民謡音階のまま、2カッコは基本形の律音階で旋律が作られています。また後半ではフレーズ2を使いました。

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音階別リンク

 

島田式における即興の技術-都6、異向形導音

都節音階の異向形導音の使い方について解説します。

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旋律としてのみの異向形導音

日本伝統音楽では和音を使わないため、旋律としてだけを考えれば良いわけです。島田式でもこの要素を最大限生かしたいと考えています。

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アのように本来の中間音の短6度音(ラ♭)と異向形導音(以下、異導音 シ♭)は続けて鳴らすことはできません。イのようにこの2種類の中間音の間に別の音が入れば問題ありませんが、異導音(異向形導音)の行き先は主音(c)にするのが安全です。

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ウのような使い方が一般的ですが、これが間接的に起こるエのようなこともあります。特に陰音階(都節音階と琉球音階)では異導音は比較的に安定していて島田式では異導音が和音構成音なら跳躍も可能です(オ)。カのように動く時もあります。

和音の中での異向形導音

既出の総和音に異導音を加えることができます。新たに異導音を含む異向形和音も使うことができます。

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異導音を含み核3を中音とする和音を核3和音と言うことがあります。この完全4度和音の下音を省略し、さらにその下に4度つまり中音から7度音を付加した和音も使えます(核3和音 下4x7)。また、導音を中音とする導和音に、下に7度なしに10度音(中音の4度の4度の4度=3度音 シ♭)を付加した和音も使うことができます。この形の導和音では上音gを省略することも可能です。そして都節ではこの和音の下音も省略することができます。*1

これらの異導音を含む和音内でも短6度音(ラ♭)を使うことができます。

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ラ♭とシ♭を混用する場合は、キのようにラ♭はソに、シ♭はドにそれぞれ反行するのが良いです。同方向に同音に進むのはちょっと変な感じがします(ク)。ただしケのように短時間、または違うリズムの場合は気にならないこともあります。

以下は直接即興演奏には関係ありませんが、参考のため、作曲のために書いておきます。

和音の連結

旋律的に異向形導音と6度音は続けられないことは書きましたが、和音をつなげる時にもどこかの声部(ライン)でこれをやれば都節音階ではなくなります。(ア、エ)赤い音符は異向形導音です。この音のある声部を見てください。

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イまたはがウが回避策となります。

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オは直接ではありませんが、導音を挟んで主音に解決しています。カのように非和声音(和音構成音以外の音 青い音符) cを入れても良いです。

異導音を含む和音をつなげる場合は同じ声部に置いた方が良いです。

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音階別リンク

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*1:4度和音では2つ続けて省略すると3度和音と同じ構成音になってしまうため避ける必要があります。ただし陰音階ではこの和音は減3和音となるので使用します。

島田式における即興の技術-都5、フレーズ2

フレーズの自作や作曲に役立てられるように理論面も書きましたが、実践を先にしたいという方は都P2から読み始ると良いでしょう。

偶数フレーズ

前項で「等しい長さの音が偶数個(2x)順次(となりの高さの音に)進行し、なおかつそれに続く解決音(+1)がオクターブ内にあれば、その解決音は開始音から上下奇数目の音程になります。そうでない箇所(ア〜オ)が奇数回フレーズ内にあると解決音は開始音の偶数目になることもあります」と書きました。

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アは順次でなく跳躍進行している、イとウは同音を反復している、ウとエは音数が奇数、オはオクターブを超えた解決音によって開始音cの偶数目に解決しています。

アについては跳躍進行の目数によって解決音が奇数目か偶数目かが決まり、アのように跳躍が奇数目あれば解決音は偶数目となります。

都P2

 ここでは偶数フレーズの例を考えます。律フレーズ2(栗P2)と呼んでおきます。

ド、ラ♭、ド、ソ、ラ♭、ド、レ♭、ファ、|レ♭またはソ

第3と第4音の間が跳躍進行して3目になっています。赤い音符は異導(異向形導音)です。

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このフレーズでは開始音から2目、または4目に解決します。

曲例1小節目では前半のみ異導を使っています。

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都P2反

ド、レ♭、ド、ファ、レ♭、ド、ラ♭、ソ、|ラ♭またはファ

f:id:esrajs:20200503214147p:plainこのフレーズでは開始音から下に2目、または下に4目に解決します。

練習曲

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曲例です。

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フレーズを倍の速さにしました。

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島田式における即興の技術-都4、P1反行形

前項でやった琉球フレーズ1です。

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奇数偶数フレーズとも音程を上下反対にした反行形でもその性質は変わりません。

都P1を上下反対にすると以下のようになります。2小節目は異向形導音を使いました。(赤い音符)

反行形:

ド、ラ♭、ソ、ラ♭、ド、レ♭、ド、ラ♭、|ソ(またはド)

ド、ラ♭、ソ、ラ♭、ド、レ♭、ド、シ♭、|ド(またはソ)

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譜例ではより適した解決音を各1つずつ書きましたが、どちらのフレーズも開始音から1目(同度)、または3目に解決できます。
7音音階用である五線譜に書くと見た目が綺麗な反行形に見えませんが、試しにP1とP1反の目数を足すと2か7になっています。このように反行形は足すと2+5xの目数になります。またこのフレーズでは反行形は前後逆にした逆行形とたまたま同じになります。

前の記事で書いた都P1の練習曲と続けて練習しましょう。

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実際には曲の中でどう使えるか示します。

特に即興演奏の際、解決音(P1では9つ目の音)は所属する和音の中音になるのが安全です。陰音階*1では上音と下音が短2度になる可能性があり、不用意にこの音程を作る音に解決することは避けた方が良いからです。

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曲として続けて2回使う例です。

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*1:都節音階と琉球音階