外縁の響

音楽のガイエン、そしてゲエンとしての響

日本の音階とインドのラーガ比較2-異向型

西洋音楽(の調性音楽)では短調に3種類の音階がある、と説明されたと思います。この中に旋律的短音階がありますが、メロディーが上がる(上行)時と下がる時(下行)では使われる音が変わります。

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旋律的短音階

下がる時の自然的短音階に比べ、上がる時は6度音と7度音が半音上がります。

このようなメロディーの上行/下行に伴う変化はインドのラーガでも日本伝統音階でも起こることがあります。

ラーガの場合、それこそ様々な物があるのですが、例として「ラーガ ヤマン」を見てみます。

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ラーガ ヤマン

このラーガは上行も下行も7音ですが、上行に際してはドとソの音は省かれる事が多いのです。この事を楽譜に書き表すと上行5音、下行7音の様に見えますが、楽譜の書き方は教師により色々とあり、実際には使用頻度の問題なのです。上行が5音で下行が7音というラーガ(例えばビーンパラシィなど)もありますが、この場合上行の時に下行の残り2音を弾く事はできません。

日本伝統音階の場合は、分類上、上行音階と下行音階の別があり、それらの性格と逆方向に旋律が進む時に「伝統音階」で示した基本の音階とは違う音が使われることがあります。譜例では1小節目に本来の音階の向き、2小節目に逆向きの時使われることがある音を書きました。この形を個人的に異向型と呼んでいます。

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逆向型

これらの新しく示した2小節目の赤い音符は、全て2度で主音に接している、広義の導音と呼べるものです。*1そしてこれら各音階の2つの赤い音符の音は続けて使われることはありません。

これらにほぼ*2対応するラーガは以下の通り。

民謡音階:raga DevaKounsTypeII

琉球音階:該当無し

律音階:該当無し

都節音階:raga Bairagan

 

*1:導音は狭義では主音の短2度下にある音のことですが、その性格の同一性から核音に2度で接する音のことも導音と言います。基本になる音階にある導音と上下反対側ある長2度の音が使える、ということです。

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導音

*2:赤い音符の音が続く可能性があります