外縁の響

音楽のガイエン、そしてゲエンとしての響

目数の提案-5音音階の取り扱い

 このブログではなるべく簡単に理解してもらえるように書いていこうと思っているのですが、今回は特に非西洋音楽に興味のある西洋音楽方面の方に読んでいただきたい記事で、邦楽方面の方にはそれほど必要性がないかもしれません。しかもやや込み入った理屈の話なので五線譜を多用せざるを得ない記事となりました。概念的なものはすっ飛ばして読みたい方は「目数」からお読みください。

五線譜

西洋音楽で使われる五線譜ですが、長音階を書いてみます。

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線と間上に綺麗に並んでいます。もちろん西洋音楽用に作られたものですから当たり前ですけど。

この線と間は等しい音程でできている訳ではありませんよね。例えば下第一間(レ)と第一線(ミ)の音程は長2度で、第一線(ミ)と第一間(ファ)の音程は短2度です。その場所が短になるか長になるかは決まっていて、それでもこれらは全て2度ですから、そのレベルで言えば同じ間隔と言えなくもありません。

 では5音音階を五線譜で書き表すとどうでしょう。

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なんだか飛び飛びで綺麗には並んでいませんね。これは音程の表し方のレベルが違うからこうなる訳です。例えば間と線の音程を短2度に限定すれば、12音音楽には良いかも知れませんが長音階も飛び飛びの変な音階に見えます。

音程のレベル

 音程を言う時、その文脈でどの程度細かく言うかが変わります。度数の言い方の使い分けはある時は大雑把すぎ、ある時は煩雑になるので長短、完全増減を付けたり付けなかったりする訳です。分類の網の目、または写真の解像度みたいな物ですね。例えば和音の構成音を説明する時、「3度、その上に3度」と言っても無意味ですね。「長3度、その上に短3度」と言えば長和音(メジャーコード)になります。

度数1(2度とか3度とか)→度数2(短2度とか長3度とか)・ピッチクラス*1→律(ピタゴラス長2度とか純正長3度とか)・セント*2

右に行くほど音程の表現は細かくなります。

目数

度数で長と短のある2度を一括りに2度と言えるなら、音階の隣の音は全て2○と言える概念があれば便利だと思います。つまり度数の一つ上の概念。

この上位の概念を、(音階の)1つ目2つ目、1番目2番目という意味で目数と名付けたいと思います。1目2目、または1メ2メと表記します。

特に日本音階に適用する場合2目は短2度から長3度までを含む表現になります。赤い音符からの音階音の音程は以下のようになります。

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5音音階では6目がオクターブになります。複音程は(x-5)目、転回は(7-x)目。

音程レベル:目数(2目とか3目とか)→度数1(2度とか3度とか)→度数2(短2度とか長3度とか)・ピッチクラス→律(ピタゴラス長2度とか純正長3度とか)・セント

実際の使用

あるモチーフの形を全体の形を変えずに違う音高に移すことを移高と言い、そうしてできた新たな音形を移高形と言います。目数は5音音階でこれをやる時便利です。

はじめに西洋7音音階の例。

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長2°上に移高した例です。赤い音符からの移高形各音の音程は、度数1レベルで元の物と同じです。

しかし、もし度数で7音音階以外を移高するとおかしなことになる場合があります。

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移高後は元の律音階と五線譜上同じ形になりますが、C律音階からD律音階になってしまいます。
目数で移高すると

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また、音階を移し替えることもできます。*3

例として律音階を民謡音階に移してみます。

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度数だと全然変わってしまいますね。

後ろから前に進む形を逆行形と言いますが、目数を逆に読めば良いだけです。

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 これらの操作は作曲や分析、即興演奏のためのフレーズ作りに役立つと思います。 

 

*1:半音の数で音程を表す

*2:半音を100セントで表す対数単位

*3:一般的に移旋と呼ばれますが、旋法と言う語は多義的ですので言ってみれば移音階です。