外縁の響

音楽のガイエン、そしてゲエンとしての響

欧米音楽での5音音階3 -琉球音階とフリギア-

琉球音階

欧米音楽で琉球(沖縄)音階を使うこともできます。というかよく耳にしますね。

琉球音階も基本の形に加えて主に下行の時に3度音では無く2度音を使うことがあります。

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出来合いのコードプログレッションにはあまり合わない部分もありますが全てのダイアトニックコードとのマッチングを見てみます。

f:id:esrajs:20200113175733p:plain音符の色はコードの中で○ルート(根音)●コードトーン●テンションまたは付加音●アヴォイドノート

下の(カッコ)に入っている音階はC琉球音階の代わりに使えます。琉球音階のソをラに変えた物が都節音階です。E民謡音階も使えます。

琉民

G7のC琉下ですが、とても素直にマッチします。素直すぎてちょっと分散和音(アルペジオ)に近い感じがします。譜例は1小節目:C琉下、2小節目:それをソから始めた音階、3小節目:主音をcに移高した音階です。

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2小節目のソを主音とする琉下は、琉球音階と民謡音階を合成した物で琉民と読んでいます。詳しくは「島田式」を参照してください。流民は琉のM7度音を半音下げたものになります。この5度琉民はメジャーでもマイナーでもドミナント7th(V7)で使えます。

琉球音階とフリギアンモード

琉球音階は短調にはあまり合わないと思います。音階にラの音が無いことからも短調に使うことはお勧めできません。ですがチャーチモード(教会旋法)のミの旋法、つまりフリギアンモードのギャップドスケールのように使うことができます。

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この琉球音階の3度音を主音とする音階はヨナ抜き短音階の2度音が半音下がった音階と一致します。

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ジャズで言うチャーチモード*1のコードは基本的に調性音楽同様、構成音を3度で積み上げていけば良いのですが*2、調性を感じさせないような工夫が必要です。ですがここでは琉球音階の活用がメインテーマですので細かいことは抜きにしてただ曲例だけを挙げておきます。

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アジア的フリギアとでも言いましょうか、インドネシアガムランで使われるペロッグと言う音階のパトゥ(旋法)と似たようなものになりますね。最後のEのコードはピカルディーのIと呼ばれる同種長調のI°の和音です。

ナポリのII

フリギアの特徴的な音であるm2°音をルートとしたコード、♭II(M7)は調性音楽でナポリのII(2度)と呼ばれ、メジャーキーでもマイナーキーでも使われます。上の曲例で言うとFのコードです。

ヨナ抜き短音階の5度音を主音にすると都節音階になること、都節音階は主に上行する時m6°ではなくm7°を使うことがあることは前の記事で述べました。マイナーキーの時5°都節上行形(≒ヨナ抜き短)を使うなら、ナポリのIIでは1°都を使えば2度音を半音下げただけ、と言うことになります。またm6°琉を使うならナポリのIIの時音階を変える必要はありません。

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○ルート(根音)●コードトーン●テンションまたは付加音●アヴォイドノート



*1:教会旋法(チャーチモード)は元々調性音楽以前、17世紀くらいまでの西洋でグレゴリオ聖歌として使われていたもので、今我々が普通に使っている3度和音のシステムとも違う形で使われていました。

*2:モードジャズでは4thインターバルビルドと呼ばれる4度構成の和音もよく使われます。