外縁の響

音楽のガイエン、そしてゲエンとしての響

欧米音楽での5音音階5 -副Vと都律-

副V(セカンダリドミナント

ある1つのキーに属するコード群(ダイアトニックコード)の中で完全5度を持つコード、つまり□Mや□mのコードを主和音と想定し*1、このキーのV7のコードを元のキーで借用することができます。このV7を副Vとかセカンダリドミナントとか呼びます。

ダイアトニック・コード
→キー
C Dm Em F G Am
副V G7 A7 B7 C7 D7 E7
Cメジャーキー 度数 VI7 VII7 I7 II7 III7
機能 II/V III/V IV/V V/V VI/V
Aマイナーキー 度数 ♭VII7 I7 II7 ♭III7 IV7
機能 ♭III/V IV/V V/V ♭VI/V ♭VII/V

例えば表の左上「ダイアトニックコード→キー」の行のDmを縦に見ていくと、このDmキーのV(副V)はA7で、それはCメジャーの度数で言うとVI7であり、II/Vつまり2度調のV(ドミナント)として機能する。(平行調の)AマイナーではI7であり、このコードは4度調のVとして働く、と言う意味になります。(※表の最下段をクラッシック式からジャズ式に書き換えました。ジャズ式ではメジャーキーだけを基準に度数を表記します。)

副Vで使えるスケール

これら副Vでは、その全てでルート=主音の琉民*2が使えます。それ以外にも

ア)コードの構成音が変位した場合でも、その変位音を含まないスケールなら副Vでも元のキーのスケールを使うことができます。

イ)今まで見てきた普通のV7と同様、メジャーキーの副Vには(Vのルートから見て)M6°都上を、マイナーキーの副Vには都上、またはm3°都上を使えます。

ウ)副V、または副(V-I)を小さな転調と考えて、転調先のイ)以外のスケールも使えます。

エ)副Vの構成音と元のキーのスケール音が混ざったスケールも使えます。

f:id:esrajs:20220212231209j:plain


G7とE7は平行調同士のドミナントを入れ替えただけなので割愛します。

エ)については都上の新しい使い方が加わります。今までテンションとして使える音はメジャー系のM9thとM13th、マイナー系のm9thとm13thと分かれていましたが、メジャーキーのII /V、マイナーキーのIV/VではM9thとm13thを混在させることもできます。このスケールは元のキーでも使えるので転調した感じをあまり出したくない時に有用です。

f:id:esrajs:20200121161501p:plain

曲例です。5小節目にIII/V7を使いましたが、-9thを使ってルートは省略しましたので、実質Cdimです。

f:id:esrajs:20200122083625p:plain

ドミナントでの都律

都節と律を合わせた音階があります。都律と呼んでいます。詳しくは「島田式」を参照してください。

f:id:esrajs:20200122140004p:plain

これは伝統音階とは言えませんが有用なのでここではドミナントとのマッチングを考えます。

f:id:esrajs:20200122140755p:plain

1つ目は先ほど検証したエ)の5度の都上を都律にした物です。都律にすることでアヴォイドの4°音をM3°音にすることができます。2つ目はこれもエ)に類する音階でマイナー系のm9thとメジャー系のM13thのテンションを含んでいます。これについては後述します。3つ目はメジャー系は変わりませんが、+11thが含まれます。4つ目はm9thの替わりにルートが入っています。相変わらずジャズっぽいですがより柔らかい音になると思います。

マイナーキーのV/V7

最初に挙げた表のように、マイナーキーの5度調はマイナーキーなのですが、V /V7では5度調のImだけでなく、元のキーのV7にも進みます。この場合V7のM3rd(曲例g♯)を含む音階であるI°都律をV /V7で使うことができます。下の曲例では2小節目になります。ここで使われているB都律は2カッコのE7(V7)でも使えます。

f:id:esrajs:20200123092353p:plain

2カッコではE7でAメロディックマイナースケールのf♯も使っているのでAmでもこれを引き継いで6thまたはドリアのM6度音を使いました。 

*1:シをルートとするコードは5度音がファで減5度になるため主和音にならず、従ってキーを作れません。

*2:欧米音楽での5音音階3を参照