外縁の響

音楽のガイエン、そしてゲエンとしての響

欧米音楽での5音音階6 -同主短調からの借用-

音階の交替

これまでメジャーペンタトニックスケール(Mpt)、マイナーペンタトニックスケール (mpt)に加え、ミ*1民謡音階、ヨナ抜きの長短音階、ミ都節音階、律音階、琉球音階など多くの5音音階を見てきました。そして副Vまで考るに至っては、音階を替える必要がある場面が出てくると思います。

それがどんな時も最善とは言えませんが、音階交替(スケールチェンジ)がスムーズに聞こえることがまずは基本になるかと思います。このためには、不必要な音階交替は避ける、ということが第一ですが、他にも(ア)7音音階レベルで同じ構成のスケールを続ける(イ)接続する音は共通音が最適(ウ)同形異高のフレーズが続く場合は少なくとも7音音階レベルで同じ形のフレーズが作れる音階を使う、という点に注目すると良いと思います。

 「7音音階レベルで同じ構成のスケール」というのは、例えばヨナ抜き長音階とヨナ抜き短音階は共に7音音階から見ると4度、7度が無い音階でその意味では同じですね。12音音階(半音階)レベルで見ると3度と6度が半音違いますから同じとは言えません。具体例をもう一つ出すと、C →C7というコード進行の時、C でMptを使うならC7で音階を替える必要はありません*2。また、CでE民を使った場合、C7ではA都上(Fキーのミ都上)を使えばシを半音下げただけで、12音音階レベルでは違うが7音音階レベルでは同じ音階ということになります。

同主短調からの借用

長調では、同主短調の和音を使うことができます。しかしここで扱うのは転調ではありませんので、3和音(トライアド)では同主短調の和音を使うものの、それ以外の音は元の長調の構成音を使うことが多いです*3。それで長調短調の音の混ざり具合はある程度幅を持つことになります。

そのような条件から考えれば使える音階は絞られるとは言え、その選択肢はかなりの数にのぼります。下の表はかなり網羅的に書いた物ですが、あくまで借用の場合で、長調の音を含むか又は和音外に短調の音が入らない音階です。

一番左の列はCメジャーで使える同主短調のダイアトニックコードで、次の列は実際のキーでは無くスケールが所属するキーを想定したもの。次は7音音階のコードスケールで、一番右の列が使用可能な5音音階です。(〜→)は7音音階レベルで同じ音階を、(ラ)などは元のメジャーキーの音を書きました。

□Hm-ハーモニック マイナー スケール □Mm-メロディック マイナー スケール □HM-ハーモニック メジャー スケール

コード キー コード・スケール 5音音階
Cm7 Gm Cドリア (III民→)II都(ラ)
(III都上→)♭VII琉(ラ)
(III都→)♭VII琉下(ラ)
(琉→)民
(律→)律(ラ)
(MPt→)II都上(ラ)
CmM7 CMm 同左 (III民→)II都律(ラ、シ)
(律→)律(ラ)
(Mpt→)II都上(ラ)
GHM*4 CMm♯4 (琉下→)V琉(ラ、シ)
(律→)V琉下(ラ)
A♭M7 Cm A♭リディア (III民→)♭III琉
(III都上→)♭III琉下
(III都→)♭AMpt
(琉→)民
(琉下→)V民
(律→)V都上
(Mpt→)V都
CHm A♭リディアン♯2 (琉下→)琉下(シ)
Fm7 Cm Fドリ (III民→)♭III琉
(III都上→)♭III琉下
(III都→)IV民
(琉→)民
(琉下→)V民
(律→)V都上
(Mpt→)V都
CHm Fドリア♯4 (琉下→)琉下(シ)
FmM7 CHM FMm♯4 (琉→)琉(ミ、シ)
(琉下→)琉下(シ)
FMm*5 同左 (琉→)琉民(ミ)
(琉下→)V民
(律→)V都上
(Mpt→)V都律(ミ)
Dm7-5 FMm Dロクリア♯2 (琉→)琉民(ミ)、琉(ミ、シ)
(琉下→)V民、琉下(シ)
(律→)V都上
(Mpt→)V都律(ミ)
B♭7 FMm B♭リディアン7th (琉→)琉民(ミ)
(琉下→)V民
(律→)V都上
(Mpt→)V都律(ミ)
B♭M7 FM B♭リディア (III民→)A都上(ラ、ミ)
(III都上→)A都(ラ、ミ)
(III都→)IV琉(ラ、ミ)
(琉→)IV琉下(ミ)
(律→)律(ラ)
(Mpt→)A民(ラ、ミ)
Gm7 FM Gドリア (III民→)VI都上(ラ、ミ)
(III都上→)VI都(ラ、ミ)
(III都→)IV琉(ラ、ミ)
(琉→)琉民(ミ)
(律→)律(ラ)
(Mpt→)VI民(ラ、ミ)
E♭M7 B♭M E♭リディア (ミ民→)II都(ラ)
(ミ都上→)♭VII琉(ラ)
(ミ都→)♭VII琉下(ラ)
(律→)律(ラ)
(Mpt→)II都上(ラ)

 

曲例をあげておきます。4小節目2つ目の和音は同主短調に転調していると考えC民=mptを使いました。

f:id:esrajs:20200205061042p:plain

音階の数が多いので、角度を変えて同主短調との違いである7度、3度、6度を含む音階を見てみます。

7度、3度、6度の内、1つ(対角線の黒い升)か2つが含まれる音階

  vii iii vi
vii

琉下

V琉(+4)

   琉      
 

V民

琉民

=IV琉下

   
iii

 琉

琉民

=IV琉下

    VI民 V都律
      II都上

V都

=ヨナ抜き短

vi

 

  VI民 II都上

V琉下(+4)

 
    V都律

V都

=ヨナ抜き短

  V都上

7度、3度、6度の全てが含まれる音階

  VI VI♭
VII III    
III♭ II都律  

VII♭

III

VI都 VI都上

IV琉

 
III♭

II都

♭VII琉 ♭VII琉下

♭III琉 ♭III琉下

♭VIMpt=IV民

*1:メジャーの3度、マイナーの5度

*2:理屈を言えば、C7はFメジャーキーのV7で、ミ民としてA民が使えますが、これはCキーではC Mptと同じ音階音です。

*3:ただ、増2度ができないようにする必要があります。

*4:+4度が入ります

*5:m7度が入ります