外縁の響

音楽のガイエン、そしてゲエンとしての響

欧米音楽での5音音階7 -半音進行(クロマティックアプローチ)-

今回は今までにこの「欧米音楽での5音音階」でまだ書いていない変位音を含む5音音階使いについて書いておきたいと思います。

増和音と都律 

メジャートライアド(長3和音)のp5thを半音上げた和音が増和音です。この和音ではハーモニックマイナーやメロディックマイナーの他、ホールトーンスケール(全音音階)も使うことができます。

5音音階ではホールトーンスケールにM7°を加えた形で都律が使えるのですが、増和音はその構造が全てM3°からできていることから3つの構成音全てがルートになりえるので、M7°も各ルートの半音下に3つあることになります。譜例では()に入れているこの音が都律の主音となります。

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曲例では各小節の1拍目で半音上の音に向かって半音進行(クロマティックアプローチ)を使っています。
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このようにスケール外の音であっても装飾音として半音下または上の音を目的の音の前につけることができます。もちろん、1〜3小節目はM7thをコードトーンとして加えたE+M7→C+M7→A♭+M7とも考えられます。が、4小節目のd♯はFmM7の7thであるeについたアポジャトゥーラ、倚音ということになります。

この半音進行は1回でも2回(ダブルクロマティックアプローチ)でもそれ以上でも使えます。ダブルクロマティックアプローチはジャズでは頻繁に使われるテクニックですが、これを利用した、いわゆる「アウト」させる方法の一例を紹介したいと思います。

アウトの一例

シから完全5度下に音を取ってファまでいくと7音が重複なく出てきます。(譜例1小節目)これはドのメジャー、またはラのマイナースケールですが、これらの音の中には3つの民謡音階(=mpt)が含まれています。つまりメジャーキーであれマイナーキーであれ、3種類の民謡音階が使えるということになります。

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ところで、ミからレに音が進む時に間にミ♭を挟むことができます。これを単音でなく、複数の音でクロマティックアプローチをすると、キーとは無関係な音群が現れます。(4小節目 E♭民)出発点E民も終着点D民も調内の音階なので、半音によって繋がれるE♭民もアウト(調外)であっても許容できるわけです。もちろんアウトは使い過ぎれば訳分からなくなります。曲例は使いすぎの例でもあります。

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3小節目のB民はCメジャーから離れますが、アプローチの音群が4音なのでf♯を出さずに済みます。A民まで繋げられるとCMptに解決したのと同じことになります。

そしてD民からB民まで使えるとすれば短3度のトリプルクロマティックアプローチも可能です。曲例では前半2小節はシングルで後半トリプルで上がっていく例です。

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