外縁の響

音楽のガイエン、そしてゲエンとしての響

島田式における即興の技術-二重の調ア、民調と律音階

島田式での核音集合=トニックは、日本伝統音階の4種で共通です。つまりトニックが鳴っている時点では琉球、民謡、律、都節の音階が演奏可能です。

f:id:esrajs:20200508101948p:plain

ここでは、上行陽音階である民謡音階と下行陽音階である律音階が同時に鳴る状態を考えてみます。

主和音以外でも、異向形導音で見てきたように以下の和音は律と共有できます。この3つの和音上で律を演奏することは問題ありません。

f:id:esrajs:20200508110610p:plain

それで、民の和音群の中で律を演奏する上で問題となるのは導和音だけです。

2小節目はやはり既習の異向形導音を付加した導和音ですが、この付加された異向形導音は律の中間音(導音)とも言えます。それで、もう一つの律の中間音である長6度音aも加えることができます。

f:id:esrajs:20200508122022p:plain

3小節目のコードシンボルM73は中音から長7度と長3度(10度)が付加されているという意味で、この2つが律の中間音です。この和音では下音fを省略することも可能です。次の譜例にこの和音のバリエーションを示します。

f:id:esrajs:20200509202827p:plain

これらの付加音としての律中間音は伴奏和音として実際に奏することもできますが、それを想定して旋律のみがこれら付加音を、つまり律音階を奏することができます。すると、伴奏は民調、旋律は同主律音階という二重の構造ができあがります。

この上に付加された律中間音は民導和音の構成音と長7度を作ります。これを転回した短2度、短9度は響きが悪いので旋律としては長く鳴らさない様にします(1、3小節目)。また、この音程を作る2音は下の譜例の2、4小節目のように互いに反行(2→1、3→4 6→5、7→1)させます。片方または両方を保留することもあります。

f:id:esrajs:20200517142858p:plain

核音と基本形の民、律各中間音を足すと3+2+2で7音となります。7音音階として捉えるとCドリアの音列と一致します。

f:id:esrajs:20200513091900p:plainしかし島田式では2つの音階は明確に区別されます。

民謡音階と律音階は交互に奏することもできますが、互いの中間音を続けて鳴らすことはできません。赤音符は民の、青音符は律の中間音です。

f:id:esrajs:20200509064249p:plain

これらの旋律は民謡音階とも律音階とも言えません。

音列としての律音階を民調と共に鳴らすことができることは説明できました。しかし、民謡音階と同主律音階とは核音が違いますから、民の中間音を律のそれに入れ替えただけでは律調とは言えません。

次の譜例では上段に民調の和音を4度進行で、下段に律調の和音を5度進行で書きました。両者は上下対称で機能も一致しています。演奏においても下段の律和音が実際に鳴っているかいないかにかかわらず、律旋律は民に対応する律の機能を想定して演奏します。つまり民の主和音では律の主和音でのように、(例えば核2音は5度音と想定)民の導和音では律の導和音でのように演奏します。

f:id:esrajs:20200508140004p:plain

次の曲例では1カッコは民謡音階のまま、2カッコは基本形の律音階で旋律が作られています。また後半ではフレーズ2を使いました。

f:id:esrajs:20200516142050p:plain

 

 

次のページ

目次にもどる

音階別リンク