外縁の響

音楽のガイエン、そしてゲエンとしての響

島田式における即興の技術-二重の調キ、都調と民謡音階

ここでは、下行陰音階である都節音階を基調に上行陽音階である民謡音階の旋律が同時に鳴る状態を考えてみます。

すでに民調と都節音階で見てきたように総和音を比較するとお互いの主和音、都の異向形の核3和音と民の核2和音の2つは共通しています。これらの和音上で民謡音階を演奏することが可能です。

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民下行形では長2度音を使いますので都の短2度音と矛盾します。ですから民謡音階は基本形のみを使います。

都の導和音の下に民の2つの中間音を4度で付加することができます。(下の譜例1小節目)

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コードシンボル下73は中音から下に短7度と短3度(10度)が付加されているという意味で、この2つが民の中間音です。この和音では上音gを省略することも可能です。2小節目以降はこの和音のバリエーションです。

都導和音の中音と付加下7度音、導和音の下音と付加下3度音は短7度(長2度)を作ります。この音程を作る2音は下の譜例のように互いに反行(2→1、3→4 6→5、7→1)させます。片方または両方を保留することもあります。

f:id:esrajs:20200522012216p:plainこれらの付加音としての民中間音は伴奏和音として実際に奏することもできますが、それを想定して旋律のみがこれら付加音を、つまり民謡音階を奏することができます。すると、伴奏は都調、旋律は同主民謡音階という二重の構造ができあがります。

この「二重の調」全てで言えることですが、都節音階と民謡音階は交互に奏することもできますが、互いの中間音を続けて鳴らすことはできません。

都音階と同主民謡音階とは核音が違いますから、都の中間音を民のそれに入れ替えただけでは民の旋律とは言えません。

次の譜例では上段に都調の和音を4度進行で、下段に民調の和音を5度進行で書きました。両者は上下対称で機能も一致しています。演奏においても下段の民和音が実際に鳴っているかいないかにかかわらず、民旋律は都に対応する民の機能を想定して演奏します。つまり都の主和音では民の主和音でのように、(例えば核2音は4度音と想定)都の導和音では民の導和音でのように演奏します。

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次の曲例では1カッコは都節音階のまま、2カッコは民謡音階で旋律が作られています。また後半ではフレーズ2反を使いました。

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