外縁の響

音楽のガイエン、そしてゲエンとしての響

インドの旋律とエスラジの奏法研究3-手首の回転

このブログシリーズの3つの奏法はどれも教師から教わったものではありません。ただここで扱う手首の回転は意識の持ちようということもあって、実際は多くのエスラジ奏者が実践しているのかもしれませんが、それは私にはわかりません。

手首の回転奏法とその利点と難点

伝統的な奏法において音程を変える時に「手首を柔らかくして」ポジションを移動することを書きました。この時の手首の角度は必ずしも意識する必要はないのですが、これによって意識的に別の音程を出すようにすることもできます。言い方を変えるなら手首の位置、つまりポジションを変えることなく、手首で角度をつけることによって音程を変えることができる、ということです。例えばエスラジで低いサ=ドを1指=人差し指で押さえるとすると、ポジションを変えずに手首の回転だけで上のガ=ミ、下のダ=ラまでは指が届くと思います。

実際の演奏では手首をしならせて、あるいはムチのように手首を使うので、手首の位置が全く変わらないということではありませんが、腕の位置を変えずに行うことができ、フレーズ全体から腕の移動回数を減らすことで演奏の負担も減らすことができます。それに加えて二本指奏法での指使いの煩雑さもある程度避けられる場合があります。

しかしこの方法はこれ以前の奏法(ポジション+指=音程)が正確なピッチで行えることが前提となり、またそうであっても音程が不確かになりやすいのでこの点も練習によって克服する必要があります。

実際の例

例えばサレガレサ(ドレミレド)と演奏する場合、以前の指使いでは

1・1 2 1・1 または

1 2・2・2 1  となります。

「・」はポジションの移動を表しています。つまりこのフレーズでは2回のポジション移動=腕の移動が必要です。

手首の回転も使った演奏をしてみます。手首を「音程の」高い方(つまり下)に回す場合は指番号に↑マークを、低い方に回す場合は↓マークをつけると、

人差し指がサの位置で 1 2 2↑ 2 1 または

人差し指がレの位置で 1↓ 1 2 1 1↓  となります。

これらの場合腕の移動は必要ありません。ポジションも変化なしと見ることができます。

これまでの奏法の混用

以上で私の書きたかった奏法の解説は終わりですが、最後に伝統的な奏法、二本指奏法、手首の回転奏法の3つを使った例を、前回のラーガ マルコーンスのフレーズで説明します。他の指使いも可能ですが例として伝統的+二本指奏法と、それらに手首の回転奏法を加えたものを1例ずつ挙げておきます。

サマガダ|マガサニ|ダー (ドファミ♭ラ♭|ファミ♭ドシ♭|ラ♭ー)

伝統的+二本指奏法 1・1・1・1|・2 1・3 1|・1

+手首の回転奏法  1・1・1 2↑|2 1・3 1|・1