外縁の響

音楽のガイエン、そしてゲエンとしての響

改造エスラジ1 共鳴弦

エスラジはインド楽器なので、当然インド音楽を演奏しやすいようにできています。

また、同じような目的のために作られている他の同類の楽器、例えばディルルバやサーランギと比べて、大きく機能が違うと言うこともありません。

しかし、本来の用途でない音楽で使う時は不便さを感じることがあります。

1つにはエスラジは準備された音高のみ共鳴します。基本的には1つの7音音階で共鳴弦(ターラーフ)をチューニングするので。するとこの音高に合っている音は共鳴しますが、そうでない音は共鳴しないどころか発音しづらくなります。何しろ振動しない弦でブリッジを押さえつけているわけですから。

インド音楽では基本的に転調はありません。しかも何十分から1時間以上でも一つのラーガ(だいぶ違いますが音階のようなもの)を演奏するので違うチューニングにする必要がありません。ですが、例えば欧米の音楽を演奏する場合、一曲5分を10曲、キーは色々、しかも曲間も短くてチューニングを変えるのが大変、なんてことが普通です。

それでこの問題の解決策は、

1、12半音を全て共鳴弦に準備する。2、共鳴弦を取り外す。

のどちらかになります。

これらはもちろんデメリットもあります。

1、は12半音全てで共鳴しますが、ブリッジを押さえつける弦が増える分だけ音量が下がります。また、特に音の出だしでは主奏弦(共鳴弦でない弓でひく弦)が発音しづらく、音が裏返る、つまり弦本来の振動でなく摩擦音のキーっという音が出てしまうことも起こりやすくなります。

2、共鳴弦にある音ない音の違いはありません。しかも音量、発音についても改善されます。けれども当然エスラジ特有の共鳴音 残響音は出ません。つまり「エスラジの音」とは別物の、胡弓に近い音になります。

ここで1つ違った点を考えなくてはなりません。「この楽器に共鳴音は本当に必要なのか」という問題です。

楽器単体で自然の共鳴 残響音がつく事は、この楽器の大きな魅力です。しかし、例えばポップスバンドの中などで演奏した場合、エスラジの音は不明瞭になります。バンドの中の1つの楽器だけにリバーブをかければその音は遠くに行ってしまいます。また、生楽器なのでツマミでリバーブを調節することもできません。

以上のことから2、の方法、つまり共鳴弦を取り去って、電気的にリバーブをかける、ということも、このような状況下、つまりバンドで欧米音楽を演奏するような場合には、エスラジにとってこの方法は有用かと思います。

 

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改造エスラジ

右の物が共鳴弦を5本加えて、12半音が鳴るようにしたエスラジ。(1)

左の物が共鳴弦取り去ったエスラジ。主奏弦も重複する1本を取ってある。(2)