外縁の響

音楽のガイエン、そしてゲエンとしての響

島田式における即興の技術-二重の調オ、律調と民謡音階

ここでは、下行陽音階である律音階と上行陽音階である民謡音階が同時に鳴る状態を考えてみます。

すでに民調と律音階で見てきた様に総和音を比較すると3つの和音が共通します。これらの和音上で民謡音階を演奏することが可能です。

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共通しない導和音について見てみます。

 律の導和音の下に民の2つの中間音を4度で付加することができます。(下の譜例1小節目)

f:id:esrajs:20200517130151p:plainコードシンボル下M73は中音から下に長7度と長3度(10度)が付加されているという意味で、この2つが民の中間音です。この和音では上音gを省略することも可能です。2小節目以降はこの和音のバリエーションです。

これらの付加音としての民中間音は伴奏和音として実際に奏することもできますが、それを想定して旋律のみがこれら付加音を、つまり民音階を奏することができます。すると、伴奏は律調、旋律は同主民謡音階という二重の構造ができあがります。

この「二重の調」全てで言えることですが、律音階と民謡音階は交互に奏することもできますが、互いの中間音を続けて鳴らすことはできません。

この下に付加された民中間音は律導和音の構成音と長7度を作ります。これを転回した短2度、短9度は響きが悪いので旋律としては長く鳴らさない様にします(1、3小節目)。それでこの律調に民旋律を使う場合、伴奏和音より下で奏すると安全です。逆に和音は高めの音域に配置する方が良いです。また、この音程を作る2音は下の譜例の2、4小節目のように互いに反行(2→1、3→4 6→5、7→1)させます。片方または両方を保留することもあります。

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律音階と同主民謡音階とは核音が違いますから、律の中間音を民のそれに入れ替えただけでは民の旋律とは言えません。

次の譜例では上段に律調の和音を4度進行で、下段に民調の和音を5度進行で書きました。両者は上下対称で機能も一致しています。演奏においても下段の民和音が実際に鳴っているかいないかにかかわらず、民旋律は律に対応する民の機能を想定して演奏します。つまり律の主和音では民の主和音でのように、(例えば核2音は4度音と想定)律の導和音では民の導和音でのように演奏します。

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次の曲例では1カッコは民謡音階のまま、2カッコは基本形の律音階で旋律が作られています。また後半ではフレーズ2反を使いました。

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