外縁の響

音楽のガイエン、そしてゲエンとしての響

欧米音楽での5音音階8-5音音階の創作-

今回でこの「欧米音楽での5音音階」のシリーズは最後にするつもりです。

これまではMpt(メジャーペンタトニックスケール )やmpt(マイナーペンタトニックスケール )など従来のペンタトニックスケールに加え、日本の音階についても欧米音楽での使用に際しての可能性を考察してきました。(5音音階 索引)今回の記事では欧米音楽のシステムから新たに5音音階を抽出してこうという試みです。

7ー2=5

まず初めにダイアトニックスケールから5音音階を作ってみます。つまり7音音階から2音を抜くことで、ギャップドスケールを作ります。

 

しかし、5音であればなんでも5音音階になるとも限りません。ア)7音音階に聞こえない→4つ以上2度が続かない。イ)分散和音に聞こえない→2つ以上3度が続かない。という条件を、部分的にせよ満たす必要があるでしょう。その上でCメジャースケールから2音を抜くと以下の7種類の5音音階が作れます。-1,4は7音音階から1度音と4度音を抜くという意味です。

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これらを見てみると、全て今まですでに考えてきた物です。

3+2=5

次に3和音に2音を加えるという方法で5音音階を作ります。この方法で作られた音階は当然3和音全ての構成音を含む、したがって和音により親和性の高い音階となります。

その前にこのブログではニロ抜き音階という呼び方をしてこなかったので、ここで軽く解説しておきます。

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今まで見てきたように、ヨナ抜きは7音音階の4番目と7番目の音を抜いた音階です。それと同様に2番目と6番目の音を抜いた音階がニロ抜き音階ということです。そして抜く元の7音音階が長音階ならば、それぞれヨナ抜き長音階、ニロ抜き長音階であり、元の7音音階が短音階であれば、それぞれヨナ抜き短音階、ニロ抜き短音階です。このニロ抜き長音階琉球音階であり、ニロ抜き短音階は民謡音階またはmptです。

下の譜例の一小節目で示したように、和音構成音以外の4音(右の黒音符)が加えられる音の候補です。この候補の中で上記ア)イ)の条件に合うものは2度音と6度音を加えたヨナ抜き音階と、4度音と7度音を加えたニロ抜き音階です。

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ダイアトニックコードそれぞれに4度音7度音(上段)、2度音6度音(下段)を加えます。前者はニロ抜き音階となり、後者はヨナ抜き音階となります。

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ここで振り返って7音音階から2音を抜くことで作られる5音音階についてもう一度見てみます。するとこれら7種類の5音音階は全てヨナ抜きかニロ抜きに分類することができるのです。赤音符を主音にするとヨナ抜き、3度下の青音符を主音にするとニロ抜き音階です。

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これを12音レベルで表記すると、ヨナ抜き長短、ニロ抜き長短以上に多くのバリエーションがあることがわかります。

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元になるダイアトニックスケールをハーモニックマイナースケールやメロディックマイナースケール*1にしてみると以下のような5音音階が現れます。

ハーモニックマイナー

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ロディックマイナー

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重複を避けるため、M7度やM6度とM7度(赤音符)を含む音階のみ書いています。

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この譜例の各音階は最初の一番低い音がヨナ抜きの主音、最後の一番高い音がニロ抜きの主音です。

 

*1:厳密には、ハーモニックマイナースケールとメロディックマイナースケールはダイアトニックスケールに含まれません

欧米音楽での5音音階7 -半音進行(クロマティックアプローチ)-

今回は今までにこの「欧米音楽での5音音階」でまだ書いていない変位音を含む5音音階使いについて書いておきたいと思います。

増和音と都律 

メジャートライアド(長3和音)のp5thを半音上げた和音が増和音です。この和音ではハーモニックマイナーやメロディックマイナーの他、ホールトーンスケール(全音音階)も使うことができます。

5音音階ではホールトーンスケールにM7°を加えた形で都律が使えるのですが、増和音はその構造が全てM3°からできていることから3つの構成音全てがルートになりえるので、M7°も各ルートの半音下に3つあることになります。譜例では()に入れているこの音が都律の主音となります。

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曲例では各小節の1拍目で半音上の音に向かって半音進行(クロマティックアプローチ)を使っています。
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このようにスケール外の音であっても装飾音として半音下または上の音を目的の音の前につけることができます。もちろん、1〜3小節目はM7thをコードトーンとして加えたE+M7→C+M7→A♭+M7とも考えられます。が、4小節目のd♯はFmM7の7thであるeについたアポジャトゥーラ、倚音ということになります。

この半音進行は1回でも2回(ダブルクロマティックアプローチ)でもそれ以上でも使えます。ダブルクロマティックアプローチはジャズでは頻繁に使われるテクニックですが、これを利用した、いわゆる「アウト」させる方法の一例を紹介したいと思います。

アウトの一例

シから完全5度下に音を取ってファまでいくと7音が重複なく出てきます。(譜例1小節目)これはドのメジャー、またはラのマイナースケールですが、これらの音の中には3つの民謡音階(=mpt)が含まれています。つまりメジャーキーであれマイナーキーであれ、3種類の民謡音階が使えるということになります。

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ところで、ミからレに音が進む時に間にミ♭を挟むことができます。これを単音でなく、複数の音でクロマティックアプローチをすると、キーとは無関係な音群が現れます。(4小節目 E♭民)出発点E民も終着点D民も調内の音階なので、半音によって繋がれるE♭民もアウト(調外)であっても許容できるわけです。もちろんアウトは使い過ぎれば訳分からなくなります。曲例は使いすぎの例でもあります。

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3小節目のB民はCメジャーから離れますが、アプローチの音群が4音なのでf♯を出さずに済みます。A民まで繋げられるとCMptに解決したのと同じことになります。

そしてD民からB民まで使えるとすれば短3度のトリプルクロマティックアプローチも可能です。曲例では前半2小節はシングルで後半トリプルで上がっていく例です。

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欧米音楽での5音音階6 -同主短調からの借用-

音階の交替

これまでメジャーペンタトニックスケール(Mpt)、マイナーペンタトニックスケール (mpt)に加え、ミ*1民謡音階、ヨナ抜きの長短音階、ミ都節音階、律音階、琉球音階など多くの5音音階を見てきました。そして副Vまで考るに至っては、音階を替える必要がある場面が出てくると思います。

それがどんな時も最善とは言えませんが、音階交替(スケールチェンジ)がスムーズに聞こえることがまずは基本になるかと思います。このためには、不必要な音階交替は避ける、ということが第一ですが、他にも(ア)7音音階レベルで同じ構成のスケールを続ける(イ)接続する音は共通音が最適(ウ)同形異高のフレーズが続く場合は少なくとも7音音階レベルで同じ形のフレーズが作れる音階を使う、という点に注目すると良いと思います。

 「7音音階レベルで同じ構成のスケール」というのは、例えばヨナ抜き長音階とヨナ抜き短音階は共に7音音階から見ると4度、7度が無い音階でその意味では同じですね。12音音階(半音階)レベルで見ると3度と6度が半音違いますから同じとは言えません。具体例をもう一つ出すと、C →C7というコード進行の時、C でMptを使うならC7で音階を替える必要はありません*2。また、CでE民を使った場合、C7ではA都上(Fキーのミ都上)を使えばシを半音下げただけで、12音音階レベルでは違うが7音音階レベルでは同じ音階ということになります。

同主短調からの借用

長調では、同主短調の和音を使うことができます。しかしここで扱うのは転調ではありませんので、3和音(トライアド)では同主短調の和音を使うものの、それ以外の音は元の長調の構成音を使うことが多いです*3。それで長調短調の音の混ざり具合はある程度幅を持つことになります。

そのような条件から考えれば使える音階は絞られるとは言え、その選択肢はかなりの数にのぼります。下の表はかなり網羅的に書いた物ですが、あくまで借用の場合で、長調の音を含むか又は和音外に短調の音が入らない音階です。

一番左の列はCメジャーで使える同主短調のダイアトニックコードで、次の列は実際のキーでは無くスケールが所属するキーを想定したもの。次は7音音階のコードスケールで、一番右の列が使用可能な5音音階です。(〜→)は7音音階レベルで同じ音階を、(ラ)などは元のメジャーキーの音を書きました。

□Hm-ハーモニック マイナー スケール □Mm-メロディック マイナー スケール □HM-ハーモニック メジャー スケール

コード キー コード・スケール 5音音階
Cm7 Gm Cドリア (III民→)II都(ラ)
(III都上→)♭VII琉(ラ)
(III都→)♭VII琉下(ラ)
(琉→)民
(律→)律(ラ)
(MPt→)II都上(ラ)
CmM7 CMm 同左 (III民→)II都律(ラ、シ)
(律→)律(ラ)
(Mpt→)II都上(ラ)
GHM*4 CMm♯4 (琉下→)V琉(ラ、シ)
(律→)V琉下(ラ)
A♭M7 Cm A♭リディア (III民→)♭III琉
(III都上→)♭III琉下
(III都→)♭AMpt
(琉→)民
(琉下→)V民
(律→)V都上
(Mpt→)V都
CHm A♭リディアン♯2 (琉下→)琉下(シ)
Fm7 Cm Fドリ (III民→)♭III琉
(III都上→)♭III琉下
(III都→)IV民
(琉→)民
(琉下→)V民
(律→)V都上
(Mpt→)V都
CHm Fドリア♯4 (琉下→)琉下(シ)
FmM7 CHM FMm♯4 (琉→)琉(ミ、シ)
(琉下→)琉下(シ)
FMm*5 同左 (琉→)琉民(ミ)
(琉下→)V民
(律→)V都上
(Mpt→)V都律(ミ)
Dm7-5 FMm Dロクリア♯2 (琉→)琉民(ミ)、琉(ミ、シ)
(琉下→)V民、琉下(シ)
(律→)V都上
(Mpt→)V都律(ミ)
B♭7 FMm B♭リディアン7th (琉→)琉民(ミ)
(琉下→)V民
(律→)V都上
(Mpt→)V都律(ミ)
B♭M7 FM B♭リディア (III民→)A都上(ラ、ミ)
(III都上→)A都(ラ、ミ)
(III都→)IV琉(ラ、ミ)
(琉→)IV琉下(ミ)
(律→)律(ラ)
(Mpt→)A民(ラ、ミ)
Gm7 FM Gドリア (III民→)VI都上(ラ、ミ)
(III都上→)VI都(ラ、ミ)
(III都→)IV琉(ラ、ミ)
(琉→)琉民(ミ)
(律→)律(ラ)
(Mpt→)VI民(ラ、ミ)
E♭M7 B♭M E♭リディア (ミ民→)II都(ラ)
(ミ都上→)♭VII琉(ラ)
(ミ都→)♭VII琉下(ラ)
(律→)律(ラ)
(Mpt→)II都上(ラ)

 

曲例をあげておきます。4小節目2つ目の和音は同主短調に転調していると考えC民=mptを使いました。

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音階の数が多いので、角度を変えて同主短調との違いである7度、3度、6度を含む音階を見てみます。

7度、3度、6度の内、1つ(対角線の黒い升)か2つが含まれる音階

  vii iii vi
vii

琉下

V琉(+4)

   琉      
 

V民

琉民

=IV琉下

   
iii

 琉

琉民

=IV琉下

    VI民 V都律
      II都上

V都

=ヨナ抜き短

vi

 

  VI民 II都上

V琉下(+4)

 
    V都律

V都

=ヨナ抜き短

  V都上

7度、3度、6度の全てが含まれる音階

  VI VI♭
VII III    
III♭ II都律  

VII♭

III

VI都 VI都上

IV琉

 
III♭

II都

♭VII琉 ♭VII琉下

♭III琉 ♭III琉下

♭VIMpt=IV民

*1:メジャーの3度、マイナーの5度

*2:理屈を言えば、C7はFメジャーキーのV7で、ミ民としてA民が使えますが、これはCキーではC Mptと同じ音階音です。

*3:ただ、増2度ができないようにする必要があります。

*4:+4度が入ります

*5:m7度が入ります

欧米音楽での5音音階5 -副Vと都律-

副V(セカンダリドミナント

ある1つのキーに属するコード群(ダイアトニックコード)の中で完全5度を持つコード、つまり□Mや□mのコードを主和音と想定し*1、このキーのV7のコードを元のキーで借用することができます。このV7を副Vとかセカンダリドミナントとか呼びます。

ダイアトニック・コード
→キー
C Dm Em F G Am
副V G7 A7 B7 C7 D7 E7
Cメジャーキー 度数 VI7 VII7 I7 II7 III7
機能 II/V III/V IV/V V/V VI/V
Aマイナーキー 度数 ♭VII7 I7 II7 ♭III7 IV7
機能 ♭III/V IV/V V/V ♭VI/V ♭VII/V

例えば表の左上「ダイアトニックコード→キー」の行のDmを縦に見ていくと、このDmキーのV(副V)はA7で、それはCメジャーの度数で言うとVI7であり、II/Vつまり2度調のV(ドミナント)として機能する。(平行調の)AマイナーではI7であり、このコードは4度調のVとして働く、と言う意味になります。(※表の最下段をクラッシック式からジャズ式に書き換えました。ジャズ式ではメジャーキーだけを基準に度数を表記します。)

副Vで使えるスケール

これら副Vでは、その全てでルート=主音の琉民*2が使えます。それ以外にも

ア)コードの構成音が変位した場合でも、その変位音を含まないスケールなら副Vでも元のキーのスケールを使うことができます。

イ)今まで見てきた普通のV7と同様、メジャーキーの副Vには(Vのルートから見て)M6°都上を、マイナーキーの副Vには都上、またはm3°都上を使えます。

ウ)副V、または副(V-I)を小さな転調と考えて、転調先のイ)以外のスケールも使えます。

エ)副Vの構成音と元のキーのスケール音が混ざったスケールも使えます。

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G7とE7は平行調同士のドミナントを入れ替えただけなので割愛します。

エ)については都上の新しい使い方が加わります。今までテンションとして使える音はメジャー系のM9thとM13th、マイナー系のm9thとm13thと分かれていましたが、メジャーキーのII /V、マイナーキーのIV/VではM9thとm13thを混在させることもできます。このスケールは元のキーでも使えるので転調した感じをあまり出したくない時に有用です。

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曲例です。5小節目にIII/V7を使いましたが、-9thを使ってルートは省略しましたので、実質Cdimです。

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ドミナントでの都律

都節と律を合わせた音階があります。都律と呼んでいます。詳しくは「島田式」を参照してください。

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これは伝統音階とは言えませんが有用なのでここではドミナントとのマッチングを考えます。

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1つ目は先ほど検証したエ)の5度の都上を都律にした物です。都律にすることでアヴォイドの4°音をM3°音にすることができます。2つ目はこれもエ)に類する音階でマイナー系のm9thとメジャー系のM13thのテンションを含んでいます。これについては後述します。3つ目はメジャー系は変わりませんが、+11thが含まれます。4つ目はm9thの替わりにルートが入っています。相変わらずジャズっぽいですがより柔らかい音になると思います。

マイナーキーのV/V7

最初に挙げた表のように、マイナーキーの5度調はマイナーキーなのですが、V /V7では5度調のImだけでなく、元のキーのV7にも進みます。この場合V7のM3rd(曲例g♯)を含む音階であるI°都律をV /V7で使うことができます。下の曲例では2小節目になります。ここで使われているB都律は2カッコのE7(V7)でも使えます。

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2カッコではE7でAメロディックマイナースケールのf♯も使っているのでAmでもこれを引き継いで6thまたはドリアのM6度音を使いました。 

*1:シをルートとするコードは5度音がファで減5度になるため主和音にならず、従ってキーを作れません。

*2:欧米音楽での5音音階3を参照

欧米音楽での5音音階4 -律音階とドリア-

欧米音楽での5音音階1」で書いたように、マイナーキーでは律音階の上行形が使えました。この音階の基本の形はm7°ではなくM6°が使われます。

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伝統的な律音階としては特に音が上行する時にM6でなくこのm7°が出てきやすいのですが、このシリーズ記事では欧米音楽とのマッチングを考えているので基本形と上行形や下行形を別の音階として取り扱っています。

□m6(9)

このマイナーキーのImで、律の基本形を使うとマイナースケールのm6°音と合いません。しかしIm6(9)のM6thと合わせることができます。上の譜例のようにcを基準とするとCm6(9)です。

また、主音から長2度上にある都節音階上行形(都上)もIm6(9)に使うことができます。この音階はヨナ抜き短音階の6度音を半音上げたものになります。

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ドリアのIVとII

マイナーキーでIVはダイアトニックでIVm(7)ですが、ドリアのIVと呼ばれる長3度持つIV(7)を使うことができます。この長3度音は音階で言うと長6度音に当たりますが、IIの和音の5度音に使うとダイアトニックでIIm(7)-5がIIm(7)になります。

f:id:esrajs:20200118184511p:plain音符の色は上段で赤はM6度音 下段はコードの中で○ルート(根音)●コードトーン●テンションまたは付加音●アヴォイドノート

もちろん、これら音階の長6度音を含む和音では必ずこの音を含む5音音階を使う必要があるわけではありません。またこれらのコードでは2度都上で基本形も使う、つまり日本音楽のように両者を区別なく使うこともできます。

そして逆にCm6でなくCm7でも使うことができます。より親和性が高いのは以下の形です。

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曲例の3小節目はD民(mpt)で良く、譜例としてはそれが正解ですが、より高揚感を高めるため欲が出てしまいました。

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ドリアンモード 

ナチュラルマイナースケールのm6度音が半音上がってM6度になったスケールがドリアンモードです。このモードの音は律音階と長2度都節音階に一致します。

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モードジャズで3度和音を使う例を挙げておきます。

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欧米音楽での5音音階3 -琉球音階とフリギア-

琉球音階

欧米音楽で琉球(沖縄)音階を使うこともできます。というかよく耳にしますね。

琉球音階も基本の形に加えて主に下行の時に3度音では無く2度音を使うことがあります。

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出来合いのコードプログレッションにはあまり合わない部分もありますが全てのダイアトニックコードとのマッチングを見てみます。

f:id:esrajs:20200113175733p:plain音符の色はコードの中で○ルート(根音)●コードトーン●テンションまたは付加音●アヴォイドノート

下の(カッコ)に入っている音階はC琉球音階の代わりに使えます。琉球音階のソをラに変えた物が都節音階です。E民謡音階も使えます。

琉民

G7のC琉下ですが、とても素直にマッチします。素直すぎてちょっと分散和音(アルペジオ)に近い感じがします。譜例は1小節目:C琉下、2小節目:それをソから始めた音階、3小節目:主音をcに移高した音階です。

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2小節目のソを主音とする琉下は、琉球音階と民謡音階を合成した物で琉民と読んでいます。詳しくは「島田式」を参照してください。流民は琉のM7度音を半音下げたものになります。この5度琉民はメジャーでもマイナーでもドミナント7th(V7)で使えます。

琉球音階とフリギアンモード

琉球音階は短調にはあまり合わないと思います。音階にラの音が無いことからも短調に使うことはお勧めできません。ですがチャーチモード(教会旋法)のミの旋法、つまりフリギアンモードのギャップドスケールのように使うことができます。

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この琉球音階の3度音を主音とする音階はヨナ抜き短音階の2度音が半音下がった音階と一致します。

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ジャズで言うチャーチモード*1のコードは基本的に調性音楽同様、構成音を3度で積み上げていけば良いのですが*2、調性を感じさせないような工夫が必要です。ですがここでは琉球音階の活用がメインテーマですので細かいことは抜きにしてただ曲例だけを挙げておきます。

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アジア的フリギアとでも言いましょうか、インドネシアガムランで使われるペロッグと言う音階のパトゥ(旋法)と似たようなものになりますね。最後のEのコードはピカルディーのIと呼ばれる同種長調のI°の和音です。

ナポリのII

フリギアの特徴的な音であるm2°音をルートとしたコード、♭II(M7)は調性音楽でナポリのII(2度)と呼ばれ、メジャーキーでもマイナーキーでも使われます。上の曲例で言うとFのコードです。

ヨナ抜き短音階の5度音を主音にすると都節音階になること、都節音階は主に上行する時m6°ではなくm7°を使うことがあることは前の記事で述べました。マイナーキーの時5°都節上行形(≒ヨナ抜き短)を使うなら、ナポリのIIでは1°都を使えば2度音を半音下げただけ、と言うことになります。またm6°琉を使うならナポリのIIの時音階を変える必要はありません。

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○ルート(根音)●コードトーン●テンションまたは付加音●アヴォイドノート



*1:教会旋法(チャーチモード)は元々調性音楽以前、17世紀くらいまでの西洋でグレゴリオ聖歌として使われていたもので、今我々が普通に使っている3度和音のシステムとも違う形で使われていました。

*2:モードジャズでは4thインターバルビルドと呼ばれる4度構成の和音もよく使われます。

欧米音楽での5音音階2 -ヨナ抜き短と都節-

使用可能音階の追加 

 欧米音楽で使われる5音音階にメジャーペンタトニックスケール(以下、Mptと略記)があるわけですが、この音階は日本で古くは呂旋法や、明治以降にできたヨナ抜き音階と同じものです。

この音階は6度音を主音にするとマイナーペンタトニックスケール(以下mptと略記)または民謡音階と、2度音を主音とする律音階上行形と同じになります。

そしてヨナ抜き音階にはヨナ抜き長音階とヨナ抜き短音階があります。

このヨナ抜き短という音階はヨナ抜き長の3度音と6度音を半音下げた音階なのですが、この音階の5度音を主音にすると都節音階になります。この音階は前の記事で書いた都節音階上行形の基本の形です。2度音を主音とすると都節上行形になります。

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理論としてではなく、実際の日本音楽の中では基本形と上行形は音階として区別されるものでは無くて、ドだけでなくレが使われることもある、という感じのものです。ただし、ドレなどのように続けて使われることはほぼありません。

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ダイアトニックコードとの対応

 新しく増えた音階を使用できるダイアトニックコードに当てはめると以下のようになります。譜例では主和音はメジャーキーでCM7、マイナーキーではAm7とします。

f:id:esrajs:20200101001556j:plain音符の色はコードの中で○ルート(根音)●コードトーン●テンションまたは付加音●アヴォイドノート

コードとの対応は「ここからここまで、それ以外はダメ」というものでなく実線で表した範囲はおすすめだけど破線で表した範囲では使っても良い、という感じです。

主和音のタイプとしてはM7ならミ民謡音階が、M6なら呂旋法が合いますし、3和音(トライアド)ならどちらでも合います。そしてマイナーキーならミ民謡音階が合いますし、主和音が3和音ならヨナ抜き短音階でも大丈夫です。M6については次の記事で触れるつもりです。

 前の記事でも書きましたが、マイナーキーでM7度を使う、つまりハーモニックマイナースケールを使う時は以下のようになります。

 

ドミナントスケールとしての都節音階上行形

 譜例にあるように、ドミナント(7)コードではメジャーキー(キーCでG7)でもマイナーキー(キーAmでE7)でもE都上が使えることになります。

また、基本的にはマイナーキーで短3度上の都上が使えます。それはこの音階がオルタードドミナント7thスケールのギャップドスケールになるからです。

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ドミナントコードではメジャーキーでもマイナーキーのスケールを使うことができます。

この使い方はジャズ畑の方には受け入れやすいと思いますが、オルタードテンションに特有な感じがあり、好みとしては分かれるかもしれません。

 それでここまででは、1つのドミナントコードに3つの都上が使え、言い方を変えると1つの都上が3つのドミナントコードで使えます。

譜例ではコードを揃えました。一番下の数字はルート(根音:r)からの音程です。

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メイジャーキーでは短3度下(長6度上)の都上が使え、マイナー、またはメイジャーキーでは1度と短3度上の都上が使えます。

さらに、ジャズ理論では減5度上のコードを「ウラ」コードとして使うことができます。例えばキーCメジャーで言うとG7をD♭7に替えることができます。このドミナントでオルタード7thスケールを使うとすると、ウラコードでも同じ音列のスケールを使うことができます。*1
これと同じく、ドミナントコードで短3度上の都上を使うとすると、ウラコードでも同じ音階を使うことができます。

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これは減5度の関係にあるコード、例えばG7とD♭7でgから短3度上、d♭から短3度下は同じ音b♭になるからです。

1オクターブを4等分割した図を示します。

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そして今度はウラコードで短3度上の都上使うと、これは元のコードのメジャーのドミナントスケールとしての都上になります。(上の譜例の最後のD♭7)

 最後にここまでのまとめとしての例を載せておきます。キーはCメジャーですが真ん中の2小節は同主短調のCマイナーになっています。

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*1:G7で使えるGオルタード7thスケールはウラコードのD♭7で使えるリディアン7thスケールと同音列で主音は減5度の音程関係にあります。